岡田和人作品リスト

黒い太字は、長期連載作。

『教科書にない』の連載開始は1994年後半か?

 

こうしてみてみると、彼のほとんどの作品はヤングチャンピオンに掲載されており

一番最初の長編『教科書にないッ!』のみ8年にわたる長期連載でしたが、それ以外の連載期間は3年程度です。

 

『教科書にないッ!』の連載の中で彼の作風が固まり、それ以降の作品群はあたかも『火の鳥』のごとく、カエル男篇、波の花篇、人形篇、ゾンビ篇・・・と、それぞれの作品の登場人物こそ異なれ、同じテーマを繰り返し繰り返し問い直すものになっています。

 

まあ、逆からいうと、最初の『教科書にないッ!』だけ、ぶれた作品ともいえるわけで、

第1巻の頃のキャラクター、1995年ころ。

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昭和のラブコメ風です。

 

それが96年から97年の『エヴァンゲリオン』ブームを経ると、

 

8巻、97年ごろ。

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貞本義行の影響がみられます。

 

12巻 1999年ごろ。

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オリジナリティ出そうとしたのかしれませんけど、鼻がでかすぎ。

 

15巻 2001年。

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だいぶ顔のバランスが落ち着いてきました。

 

17巻 2002年ごろ。

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その後の絵と大体同じになりました。

また主要キャラクターの絵が安定すると同時に、PCを使ってのマンガ制作の型ができてきたように思われます。岡田和人作品の文法とでもいうべきスクリーントーンの使い方も今の作風にかなり近くなっています。

また、コマの組み方も作風が決まってきました。

 

かように見てみますと、岡田和人作品はエヴァンゲリオンの影響を受けて主要キャラクターの描き方がすっかり変わってしまうのですけれども、エヴァンゲリオンの一番の人気キャラ・綾波レイ風の登場人物はまだいません。

 

それが、次のヤングチャンピオンの連載作品『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』になると、綾波オマージュとでもいうべきキャラの優菜が登場します。

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何を持って綾波キャラか?と言われると厳密な定義は難しいのですが、わたし的に言うなら、その台詞を林原めぐみが吹き替えても違和感なければ、綾波キャラ。

岡田和人作品では、前髪がM字型であるのが共通点と言えるでしょうか。

 

岡田和人は、エヴァンゲリオンファンを公言していて、

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『教科書にないッ!』のアニメ化の際には、アスカとミサトさんの中の人が参加。

 

ただしかし、『教科書にないッ!』の時、すでに綾波キャラを登場させたくて仕方なかったように思われます。

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『教科書にないッ!』の最終回にちょこっとだけ登場する主人公の娘。前髪がM字型で岡田作品内の綾波キャラの初登場でしょうか。

 

次の『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』では、存分に綾波キャラが準主役として活躍しますが、それでは岡田和人作品はエヴァンゲリオンのパクリに過ぎなくなったのかというと、実はその逆で、ほかの女性キャラの役割分担はすっきりし、岡田和人の個性が分かりやすくでるようになったようです。

 

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『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』の主役・莢香。

院の部分を綾波キャラが引き受けてくれるおかげで、明るい性格設定でも説得力がそれなりにあるキャラになっている。

で、主人公の恋の対象でエヴァンゲリオンでいうとアスカの立ち位置なのだろうけれども、アスカと全然キャラが似ていない。

 

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湯の浜、ミサトさんの立ち位置なのだろうけれど、ミサトさんとあんまり接点のないキャラ。

 

さらに言うと、『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』では、そのほか脇役女性キャラを綾波キャラの分裂ヴァリエーションが担います。

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ヤクの売人やってる悪玉も綾波デザイン。『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』での登場回数は少ないですが、この次の作品『すんどメ』の主人公・胡桃とほとんど同じ外見で描かれています。

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手塚治虫作品だとスカンクとかヒゲ親父が作品の枠を超えてしょっちゅう登場してくるのですが、それを手塚治虫はスター・システムと称していました。

岡田作品群では、前の作品で脇役チョイ役だった人が次の作品では主役に大抜擢されている、前作では悪役を演じていた役者が次作では感涙を誘うヒロインを演じている、そんな感じでしょうか?

映画的に言うと岡田組という感じでいつもの常連の役者がいる、そんな感じです。

 

『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』の不思議少女も、前髪M字型の変形綾波キャラ。

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話の本筋とは関係のないエピソードに係わるキャラですが、後の作品『いっツー』の3人の主人公のうちの一人とほぼ同じ外見です。映画俳優的に言うなら、初出演の脇役でインパクト残して、のちの作品で主役をゲットしたといったところ。

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ちなみに『いっツー』の主人公は綾波の派生キャラの系譜にありながらも前髪はM字ではありません。が、その代わりといっては何ですが、主役男キャラの方が前髪M字になっています。

 

また、この綾波派生キャラは、その後の岡田作品群のいくつものモチーフとかかわっており、『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』では本筋とは絡まないキャラでありながら、岡田和人ワールドでは重要な存在のようです。

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変な文系サークルの部室がここで初登場。『すんどメ』『いっツー』に再登場します。

 

『いびつ』の主要モチーフである球体間接人形がここで登場しています。

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ひたすら勃起せずにはいられない男性の有様を哀れで美しいと表現、これも『いびつ』で繰り返されます。

 

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ほのかな死のにおいを伴うキャラ。

 

SM的な場面も共通しています。

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こうしてみますと、『いびつ』の主人公・森高円も綾波レイの派生キャラの系譜上にあることがよくわかります。

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M字前髪以外の外見的類似はなくなってしまいましたが、肉体的苦痛、精神的苦痛に対して無頓着という設定、そして自分が複製可能であることからくる空虚さとやさしさを持っているという点に関しては、本家綾波レイをうまく継承していると言えます。